中務 裕貴さん(2020年理工学部卒)

[ 編集者:総合企画部(大学企画・グローバル化推進担当)       2020年3月25日   更新  ]

研究、留学、体育会活動に全力で挑んだ4年間

(プロフィール)

2016年3月に奈良県立平城高等学校を卒業。高校在学中に、関西学院大学理工学部教授による出張授業を受講したことをきっかけに、元々興味を持っていた生物の仕組みや機能について深く学びたいという想いを強くし、2016年4月関西学院大学理工学部生命科学科に進学。

大学3年次の夏休み、インドネシア・ジャワ島で実施する理工学部の海外理工学プログラム"Introduction to Scientific Diving"に参加し、「インターナショナルプログラム」を修了。また、課外活動では1年次より体育会水上競技部水球パートに所属し、引退までの3年半、神戸三田キャンパスでの勉学と西宮上ケ原キャンパスでのクラブ活動の両立に励んだ。卒業後はグローバルな展開を予定している食品メーカーに就職。

 

1.所属学部での学び(ホームチャレンジ)

技術や知識だけでなく、粘り強く努力することの大切さ

理工学部ではどんなことを中心に学びましたか?

 理工学部生命科学科では、実験実習が1回生の秋から始まり、3回生の11月まで続き、その後は研究室へ配属(正式には3回生は仮配属)となります。実験実習では初めて扱う実験機器も多く戸惑いもありましたが、これらを通じて、生命科学の研究に必要な多くの技術と知識を学ぶことができました。

 また、実験では失敗も多く、予想された結果が得られず、初めからやり直したことや、実験後の実験結果や考察などをまとめた実験レポートを作成するため、提出期限前は徹夜することもありましたが、何事も諦めず粘り強く努力することの大切さも学ぶことができました。
 

ウニの発生から生命誕生の仕組みを知った感動的な体験

■理工学部で印象に残った授業について教えて下さい。

京都大学瀬戸臨海実験所近くの砂浜で

 1回生の夏休みに履修した臨海実験が特に印象に残っています。

 臨海実験は白浜、高知、舞鶴の三つの場所において4泊5日の期間で実施されましたが、私は白浜にある京都大学瀬戸臨海実験所で、ウニの発生や磯採集などの実習を行いました。

 ウニの発生の過程を顕微鏡で観察し、スケッチする実習では、観察が夜遅くまで続くなど大変な面はありましたが、今まで写真などでしか見たことがなかった受精膜の形成、卵割やプリズム幼生など生命誕生の仕組みを直接観察することができ、感動したことを今でも覚えています。

 また、田辺湾の無人島で採集した海岸生物の同定やカメノテの解剖など様々なことを体験でき、有意義な5日間の実習であったと思います。そして、夏休みの終わりには実習の成果をグループで発表を行いましたが、初めてのプレゼンテーションに向け、パワーポイントの作成などみんなで協力し、取り組んだことも印象に残っています。

考え抜く力、計画を立てる力、粘り強く努力する力を身につけた

■自分自身の人生、キャリアに影響を与えた授業があれば教えてください。

 理工学部生命科学科の各回生で受けた実験実習です。特に、3回生で行われる先端生命科学実験は、生命科学科の8つの研究室の研究テーマに沿ったモデル的な実験を一年間通して実習できました。2回生までの実験実習とは違い、決められたテーマを自身が考えた手順、方法で結論へと導く実験実習が多く、自分自身で試行錯誤し、考える力、計画を立てる力を養うことができたと思います。また、前述したとおり、実験を簡潔するまでは諦めず粘り強く努力する力も養うことができ、研究室での卒業研究だけでなく、今後社会人となり仕事の場でも活かしていけるものと考えています。
 

研究とクラブの両立を支援してくれた恩師の存在

■自分自身の人生、キャリアに影響を与えてくれた教職員について教えてください。

 研究室の藤原伸介教授です。先生からご指導頂いたのは1年数か月と短い期間ではありましたが、先生の研究への姿勢、考えは様々な面で学ぶべきところが多く、私の人生に大きな影響を与えてくださりました。また、報告会等では厳しいご指摘を頂くこともありましたが、めげずに頑張らなくてはという考えにもさせられました。さらに、体育会水上競技部での活動、就職活動にも色々とご配慮を頂き、研究面とこれらの活動を両立できたのも、先生のお蔭だと感謝しています。

  1. ○中務君について 
     体育会での部活動、就職活動のすべてを両立したミラクルな学生です。水球選手としても活躍し、良い戦績を残しました。3年生の夏には海外理工学プログラムに参加し、ジャワ島でダイビングのライセンスを取得し、熱帯海域のサンゴ礁を調査しました。卒業研究では耐熱性酵素の固定化を極め、卒業間際まで実験して華々しい成果をあげました。よくこれだけ欲張りな大学生活を送れたものだと感心します。私としては大学院に進み、研究現場で活躍してくれることを期待していましたが、彼なら学部卒業でもプロジェクトを牽引するリーダーになってくれると信じています。
    ○海外理工学プログラム(PBL科目)の意義
     英語力をつけるために英会話学校に行く人は多いと思います。ところが実際、英語を使う現場でも、思うように話せないのが現実です。海外のPBL(Project-based learning)科目は、グループで共同作業を行いながら課題を解決します。課題解決が目的ですが、意識しないうちに英語力を身につけていきます。専門性と語学力の両方を身につけることのできるのが海外PBL科目の魅力です。一番の意義は、相手が外国人でもひるむことなく意思疎通をする度胸が得られることです。
    ○関学理工学部を目指す方へ 理系に進む方は、将来研究者や技術者になりたい方が多いと思います。一人でプログラミングを行ったり、黙々と実験する様子を想像すると思いますが、実際の研究現場では専門の異なる研究者がチームで共同作業を行います。仲間とアイデアを出し合ったり、時には専門外のアドバイスを取り入れたりしながら進みます。皆で立てた仮説が実験で証明できたときの達成感は格別です。理系学部の研究室では、文系のゼミにはない強い絆ができます。楽しみに進学してきてください。

    藤原教授と中務さん

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2.海外理工学プログラム"Introduction to Scientific Diving"(アウェイチャレンジ:インターナショナル)

ダイビングでサンゴ礁の生態を観察し、プログラム最後にはライセンスを取得!

■なぜ、 海外理工学プログラム (*注1)に参加を決意したのですか?

インドネシア・ディポネゴロ大学での授業

 大学へ入学した当初から、一度は海外へ行きたいと考え、大学の留学プログラムをよく調べていましたが、夏や春の長期休暇期間中は部活動や遠征があり、なかなか参加する機会がありませんでした。

 しかし、3回生になった時、就職活動前の最後のチャンスになると思い、改めて短期間で行ける海外理工学プログラムのパンフレットを見て、どれかに参加しようと考えました。そして、プログラムを選択するにあたり、これまで水に関わるスポーツを続けてきたことや、海洋生物にも興味があったことから、ダイビング免許を取得し、多くの魚と一緒に泳ぎ、サンゴ礁を観察できる海外理工学プログラム"Introduction to Scientific Diving"(*注2)に参加することを決めました。

 (*注1)理系グローバル人材の育成を目指し、理工学部が独自に開講する特色ある海外派遣プログラム。海外協定大学と提携し、プログラミング修得を組み込んだ英語学習プログラムや、南方海域の海浜生物の生態を通じて生物の多様性獲得と環境保全重要性について学ぶプログラムなど、各々ユニークなテーマで2020年度は6種類のプログラムを実施する予定。

  (*注2)海外理工学プログラムの一つで、インドネシアの協定校ディポネゴロ大学のサイエンティフィックダイビングの授業を特別に本学理工学部の学生に提供いただくプログラム。国立公園の離島へ赴き、南方海域特有のサンゴ礁や海洋生物を、ダイビングしながら観察し、その生態について学ぶ。ダイビング免許(ADS ベーシックダイバー)の取得も組み込まれており、座学、ダイビングトレーニング、フィールドワーク等、様々な内容が盛り込まれている。

サンゴ苗の植え付けを体験、環境保全の重要性を学ぶ

■プログラム期間中はどんな活動をしましたか。活動を通して、学んだこと、新たな気づきがあれば教えてください。

 インドネシアのジャワ島中部の都市スマランにあるディポネゴロ大学で、サンゴ礁やマングローブの生態環境に関する基礎知識を学ぶとともに、同大学学生との交流を行いました。また、ダイビング免許取得のために、スキューバダイビングの器材をつけて、プールでの練習に始まり、その後は国立公園になっている離島へ行き、ダイビングをしながら南方海域特有のサンゴ礁や海洋生物を観察し、その生態について学びました。そして、サンゴ礁を守るため、サンゴの苗を植え付ける作業も行いました。

 プログラムではダイビング免許が取得でき、日本の海では見ることができない白い砂浜、透明な青い海やサンゴ礁、海洋生物が観察できると考え参加しました。しかし、プログラムで様々なことを体験していくことで、単に観察するだけでなく、改めて、このような自然環境をこれからも大切に守っていかなければと思うようになりました。そして、このプログラムに参加し、世界各地でサンゴ礁保全の取り組みが行われていることも知りました。今回のインドネシアでのサンゴ苗の植え付け作業はその取り組みの一つで、それに参加でき、非常に良かったと思いました。地道な活動ですが、これらの取り組みの積み重ねが自然環境を守るためには大切だと考えました。これを機会に日本でも行われているサンゴ苗の植え付け作業にも参加出来ればと思いました。また、私たちがインドネシアで植え付けたサンゴが成長し、将来サンゴ礁へと成長しているところを見ることができればと思っています。

Introduction to Scientific Diving-現地学生と共に
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3.体育会水上競技部での活動(課外活動)

全国大会出場を目標に、懸命に練習を続けた3年半

■なぜ水上競技部に入部を決めたのですか。また、活動内容、実績について教えてください。

 中学では部活動は水泳部でしたが、入学した高校には水泳部はなく、県唯一の水球部に入部し、初めて水球を始めました。高校では全国大会出場を目標に練習に取り組みましたが、近畿大会でのベスト4止まりで、目標は達成できずに終わりました。

 大学に入学し、当初は学業を中心にという思いもありましたが、高校で掲げた目標が諦めきれず、大学で全国大会出場という目標を達成できればと考え、水上競技部水球パートに入部しました。

 水上競技部水球パートへと入部しましたが、先輩や同期部員との実力差が大きく、また、授業が終わり神戸三田キャンパスから西宮キャンパスにあるプールへ着く時には練習が始まっており、さらに実験が長引いた時には練習に参加できないこともありました。当初は焦りもありましたが、諦めず練習後や少しの時間を見つけては走り、体力をつけ、少しでも実力差を埋めようと懸命に練習を続けました。

 そして、4回生が引退した1回生の秋からはレギュラーに定着できるようになり、11月の静岡選手権では新チームで初優勝することができました。また、2回生で迎えた関西学生リーグでは最終戦で勝てば、高校からの目標のインカレ出場達成も可能でありましたが、残念ながら負け、1部4位で終わりました。その後、3回生では関西学生リーグ入れ替え戦に負け2部へ、2部1位で、4回生で迎えた最後のリーグ戦も入れ替え戦に負け1部復帰ができないまま2部1位で終わり、引退となりました。目標としていた全国大会出場は夢と終わり、後輩へと引き継ぐこととなりました。引退後は、現在地元平城高校のOBチーム「奈良水球」で水球を続け、勝敗ではなく、仲間と競技を楽しんでいます。

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4.卒業後の進路と今後の夢

食品にかかわる仕事を通して社会に貢献したい

■卒業後の進路、そして社会人になってからの今後の夢について教えてください。

 卒業後は食品メーカーへ就職します。私は食べることが好きで、海外理工学部プログラムで訪れたインドネシアでは、日本では食べたことがない美味しい料理をたくさん食べることができました。就職先決定にあたっては、より美味しく、より健康になれる製品をつくることに挑戦したいと考え、食品メーカーへの就職を決めました。また、食品メーカーとしては製品の品質や安全を守ることも課題で、安心して食べて頂ける製品をつくることも重要な使命だと考えています。就職する食品メーカーでは健康になれる美味しい、安全な製品づくりに挑戦し、それを食べた方々に笑顔になって頂くことで、少しでも社会へ貢献できればと考えています。

  また、社会人になっても、社会人チームで水球を続けていきたいと思っています。昔から走ること、特に長距離走も好きで、これまで培ってきた泳力と走力を活かし、トライアスロン競技へも挑戦できればと考えています。さらに、取得したダイビング免許も活かして、透明な青い海でサンゴ礁や海洋生物を観察するとともに、サンゴ苗の植え付け作業など自然環境保全活動にも参加出来ればと考えています。

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5.後輩へのメッセージ ~さいごに~

目標を持って、最後まで粘り強く努力しよう!

■関学の後輩、そして今後関学への進学を志す高校生に向けてメッセージをお願いします。
 

中務 裕貴さん

 関学では専攻している専門分野だけでなく、広い視野を養うことができる様々なメニューがあります。特に留学プログラムはとても充実しています。私の場合は、部活動を優先し、これらを十分に活用することができなかったのですが、もっと積極的に他のプログラムにも参加していれば、もっと新しい学びがあったのではと思っています。

 また、就職活動については、本格的なスタートが他の人に比べ出遅れ感もあり、当初は焦りもありましたが、周りの方々のご協力もあり、就職先を決めることができました。

今大学生活を振り返ってみて、研究、部活動、就職活動などを行うにあたり、何事においても、目標を持ち、その目標を簡単に諦めてしまわずに、最後まで粘り強く努力することが大切ではないかと考えます。

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