貞岩 しずくさん(文学部4年)

[[ 編集者:総合企画部(大学企画・グローバル化推進担当)       2021年3月 日   更新  ]

~ハンズオン・ラーニングプログラムを通じて、「人が生きる」地域に向き合い続ける~

プロフ写真

(プロフィール)
 2018年3月に広島県立観音高等学校を卒業。同年4月関西学院大学文学部に進学。

 進路に悩んでいた高校時代に、関西学院大学の「ハンズオン・ラーニングプログラム」(*注)を知る。もともと小・中・高において、地域ならではの題材を扱い、身の回りの社会事象・自然現象について問題解決的なアプローチを行う広島市独自のカリキュラムを通じて地域に関心を持っていたこともあり、「地域に触れる」ハンズオン・ラーニングプログラムに強く惹かれ、関学への入学を決意。

 現在文化歴史学科地域学地域文化学専修4年生(2021年度時点)に在籍中。学部内外において数々のハンズオン・ラーニング科目を履修・修了している。

 将来はマスメディア関係の職に就き、数字や分かりやすい事実だけではなく、その根本にある人間・地域の営みに依拠した情報を発信していきたい、と語る。

(*注)ハンズオン・ラーニングプログラムとは、「キャンパスを出て、社会に学ぶ」をキーコンセプトに、企業や地域、行政等と連携し、①問題解決・企画提案型プロジェクト、②インターンシップ、③フィールドワークを中心とした実践型の体験学習プログラムで、「社会の課題に自ら向き合う学修姿勢・思考力・行動力」を修得することを目指す。詳細は、 ハンズオン・ラーニングセンターのHP 参照。
 

1.所属学部での学び(ホームチャレンジ)

地理学地域文化学専修でのハンズオンの学び

■文学部ではどんなことを中心に学んでいますか?

 学部では、所属する地理学地域文化学専修において、地図から地域を読み取るなど基本的な地理の勉強に加えて、イラストレーターを用いた地図の作成や国勢調査を用いたグラフや図の作成方法を学んでいます。また、実際に地域を訪れて現地調査をし、フィールドワークの方法を学んでいます。特に、「エクスカーション」の授業は印象に残っています。2年生では山梨県、3年生では広島県を訪れフィールドワークを行いました。山梨ではプログラム中心でしたが、広島では自らテーマを設定し、現地調査を行いました。

 私は、「広島における慰霊空間の変容」をテーマに、母校の前身である広島県立広島第二中学校の慰霊碑について聞き取り調査を行いました。多くの学校が学内に原爆死没者を追悼する慰霊碑を建立している中、広島県立第二中学校では、亡くなった場所を長年慰霊の場としています。場所が担ってきた慰霊の場という役割を、学内で記憶の継承として慰霊空間を形成する可能性があることを聞き取りによって知ることができました。ヒロシマの記憶をどう継承していくかが問われる中で、ヒロシマの在り方を考えさせられる時間となりました。

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2.ハンズオン・ラーニングプログラム(アウェイチャレンジ)

関学にしかない学びを求めて~ハンズオン・ラーニングとの出会い~

■たくさんのハンズオン・ラーニングプログラムを履修されています。ハンズオンに興味を持ったきっかけや理由を教えてください。

南洋理工大学での友人たちと
広島での実習の様子

 志望校に悩んでいる中で、大学案内の中からハンズオン・ラーニングというプログラムを見つけました。アクティブラーニングという学びを提供する大学は多くありますが、ハンズオン・ラーニングは関学独自のプログラムであり、実際に地域に出て「地域」に触れ続けることができるのは関学しかないと思い、進学を決めました。関学独自のプログラムということで、「地域」と「そこに生きる人々」を通して私自身も地域とのかかわり方を考えることが出来るのではないかと思って現在も履修しています。


特に印象に残っているプログラムについて教えてください。

 社会探究実習Ⅰ・Ⅱ(広島・江田島平和FW)が印象に残っています。小・中・高と通っていた学校が被爆していたこともあり、「平和」というテーマを大学で考えていきたいと思っていました。実習では、広島・呉・江田島に関わる人々への聞き取り、呉三津田高校2年生の生徒との合同授業を通して、「平和とは何か」を考え、探究します。合同授業では、ディスカッションテーマをもとに高校生と大学生という、同世代の中で議論します。そこでは、自分だけでは気づけなかったはっとするような鋭い意見もあり、より議論を深めることができました。「平和」というテーマだけでなく、同世代が言葉によって切磋琢磨しあう場となっていることがとても印象に残っています。

 社会探究実習Ⅰ(瀬戸内海・豊島環境FW)は、ヒロシマと似ている部分があるなと思い履修しました。もともと豊島がどういった島か全く知りませんでしたが、豊島事件(産業廃棄物不法投棄事件)と今もなお闘い続ける島であり、その痕跡は今も島に残っています。実習中は、空き家を中心に調査し、最終日にはフィールドワークをもとに島民の方々と意見交換会を行います。この実習を通じ、「空き家」と一口に言っても、その一つ一つには島民それぞれの想いがつまっており、国土交通省が定める基準によって一概に空き家と決定づけてしまうことの危険性を感じました。調べてみると、空き家の基準に合致していても、住民の視点からみると単に空き家とは片付けられない事情があるケースもあります。住民の方に聞き取りをしていく中で、「豊島の空き家」が何であるのか、何がそうさせているのかを考えることで、島の魅力の再発見につながったのではないかと思います。

豊島での実習で住民の方へ聞き取り調査を行う様子

    

問題そのものの妥当性をも問う、ハンズオン・ラーニングの学び

■ハンズオン・ラーニングプログラムを通してどんな学びがありましたか。

 学部や学年に関わらず議論ができるので、議論の中で自分の考えを深めていくことができます。また、決して短くはない期間を地域と向き合うことで自分が生きている社会の幅を広げることができました。私たちが生きている社会について、地域を通して考えることは、社会の枠組みを問うことに繋がります。

 また、ハンズオンでは、既存課題をどう解決するか、というアプローチではなく、今「課題」と捉えられていることがそもそも本当に課題なのかという妥当性を考えることを学びます。今目の前にある問題や課題について、解決方法を考えてしまいがちですが、一旦ゼロから考える思考は、私たちが社会を生きていく上でもなくてはならないものだと思います。また、ハンズオンは「身に着けた」ことを測るのではなく、「身に着けている状況」に身を置くことを経験することができます。その状況で日常を過ごすと、それまでであれば見落としてしまうような日常の小さなことからも、疑問や課題意識が「引っかかる」ようになります。そのような経験を通じて、改めて社会の枠組みを問うきっかけになると思いました。

学生相互の議論の中での学びと、教員のサポート

■副専攻で苦労したこと、またそれをどう乗り越えたか教えてください。

 ハンズオンでは、「地域」に直接触れていく中で、自分の考えを言葉で表現することが求められます。議論やフィールドワークを通して、自分の考えをより明晰にしていく過程はとても難しかったです。そんな時に、実習で出会った仲間と論点を出して共に考えることで、1人では見えてこなかった考えに触れることができます。ハンズオンそのものが目に見える、わかりやすい学びではないので、そこを掴むまでが大変ですが、一方で面白さでもあると思いました。

 考えを深めるにあたっては、ハンズオンでよく利用される「ビブリオ」という手法が役に立ちました。これは授業の中で、教員や他の学生が話したこととあわせて、自分が考えた事・感じたことを芋づる式にノートにメモしていくという手法なのですが、書くことで自分の中に考えをためていける感覚があります。私はハンズオン以外の授業や日常生活の場面でも、この方法を活用することもあり、自分の考えを深めるのに有効な方法を学ぶことができました。

 また、ハンズオン・ラーニングセンターの教員からもとても刺激を受けました。特に木本 浩一教授の存在は大きかったです。議論の際には、一討論者として、また教員という立場で手助けをするなど木本先生を通して「地域」との向き合い方を考えることを意識するようになりました。先生と出会ったことで、実習に関係なく「地域」と関りを持つきっかけとなりました。

 
 

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4.卒業後の進路と今後の夢

■今年4年生。これからチャレンジしたいことや、将来の目標を教えてください。

 今年が最終学年ということもあり、授業に関わらず「地域」に触れることを今まで以上にしていきたいです。3年時はコロナ禍ということもあり、豊島や江田島といったフィールドに出ることが出来ませんでした。この状況下で、今私が出来ることを「地域」と一緒に考えて行動していきたいです。

 ハンズオンを通して、数字やデータでは知ることのできない地域やそこに生きる人々の存在を意識するようになりました。数字は私たちに分かりやすく情報をもたらしますが、その一方で営みや人の存在を隠してしまいます。そのため、将来はマスメディア関係の職につき、隠された営みを多くの人々に知ってもらいたいと思っています。地域ひとつひとつは小さいかもしれませんが、そこには生きている人々がいます。そこに関心をもって、自らのテーマとなるきっかけを作っていきたいです。

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5.後輩へのメッセージ ~さいごに~

■関学の後輩、そして今後関学への進学を志す高校生に向けてメッセージをお願いします。

田中 真央さん
貞岩 しずくさん

 
 大学は専門を学ぶ場所だ、と思っている人が多いかもしれません。専門はもちろんですが、大学で同世代の人と専門関係なく議論しあうことのできる場でもあります。

 学びの場は大学や学校の中だけとは限りません。自分のよく知る街かもしれないし、まったく知らない島かもしれません。フィールドは可能性にあふれています。その可能性を広げられるのは自分自身であり、向き合えば必ず見えてくるものがあります。正しいか正しくないかの次元ではなく、より大きな枠組みで社会を問うことは、自分のテーマに繋がるきっかけになるはずです。

 関学には学びの仕掛けがたくさんあります。また、何かしたいという気持ちひとつで、この仕掛けに飛び込むことができます。楽しい時間はもちろんですが、仲間と共に悩み苦しむ時間もすべてが自分の財産になると思うので、高校生では出来なかった学びに挑戦してほしいと思います!

 

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